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「改正」不動産鑑定評価基準

 国際評価基準(IVS)との整合・対応を踏まえ検討が進められてきた改正版の不動産鑑定評価基準が2014年11月に施行されました。
 基準の改正点の概略は以下のとおりです。



「スコープ・オブ・ワーク」(調査の範囲)の概念の導入
・「調査範囲等条件」の付加
 鑑定評価の基本的事項で「調査範囲等条件」という項を新たに設け、調査の範囲につき、依頼者との合意により条件を付加できるものと変更される。
・手法適用の柔軟化:「三手法併用原則」の見直し
 従来の基準では、「原価方式、比較方式及び収益方式の三方式併用が原則」とされていたものが、「市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべき」と、複数手法の適用を原則としながらも三方式併用にこだわらない形に変わる。また適用手法に関して市場の特性の反映がうたわれる。


価格概念のIVSとの整合性の向上
・特定価格の定義変更
 特定価格の定義として、「正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値との乖離」が盛り込まれた。これは、結果として正常価格と相違がない評価は正常価格 として表示することを意図したもので、従前の日本の「正常価格」概念とは異なる、IVSにおける「投資価値」や「公正価値」との区分との対応が意識されたものといえる。
・「収益価格標準」の記載を留意事項から基準本文に移行
 「事業継続を前提とした会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価」「資産の流動化に関する法律又は投資信託及び投資法人に関する法律に基づく鑑定評価」はいずれも収益価格(後者はDCF法)が標準とされているが、従来留意事項にあった当該事項が基準本文に格上げされる形で明記された。

事業用不動産に係る規定の充実
・収益還元法における「事業用不動産」の明記
 留意事項の中で、収益還元法の項における「事業用不動産」の項が新たに追加、「ホテル等の宿泊施設、ゴルフ場等のレジャー施設、病院、有料老人ホーム等の医療・福祉施設、百貨店や多数の店舗により構成されるショッピングセンター等の商業施設」が特性も含め例示された。

建物評価に係る規定の追加・見直し
・建物の個別的要因の充実
 住宅、事務所、商業施設、物流施設…と、用途ごとに個別的要因を例示するなど、充実が図られた。
・再調達原価の明確化
 再調達原価の「通常の付帯費用」に「資金調達費用や開発リスクが含まれる」ことが明記された。
・安易な「土地建物一体減価」への“警鐘”
 「留意事項」の原価法の項に「減価修正の手順には、土地と建物について個別に減価修正を行う場合と、当該修正を行った上で建物及びその敷地について減価修正を行う場合があるが 、減価の要因について重複して考慮することがないように留意すべきである」という文言が加わった。
 安易な「一体減価」に対する警鐘といえる。